慈眼寺の薬師堂

慈眼寺の薬師堂には「瑠璃殿」と書いてありますが、薬師瑠璃光如来がお祀りされているお堂です。

この慈眼寺の薬師瑠璃光如来は、別名「雨薬師」と言われています。

 

このお堂は明治11年の秩父の大火で焼失してしまったのですが、明治40年に再建いたしました。

いろいろな理由があって29年ほど時間が経ってしまったのですけれども、明治40年7月20日にこのお堂を建てた落慶の法要が行われた記録が残っています。

 

その明治のお堂が傷んできたので、また平成の終わりのころに場所を変えて再建したのですが、建物自体は明治のころのままです。

少し直してありますけれども、そのままの建物になっています。

少し小柄ですけれども、離れて見ると非常に美しい様式の建物になっています。

 

中に入りますと、正面には薬師様がお祀りされています。

毎月8日にご祈願していますから、それをご覧いただいている方もたくさんいらっしゃると思いますが、右と左には仁王様がいます。

天井には、観音堂と同じく井上甲山が描いた天井絵が施されています。

そして右と左の鴨居の辺りには十二神将、薬師様をお守りくださる十二体の仏様が描かれておりますが、これは皆川月華という方が描いた絵です。

そう考えますと、明治から大正、そして昭和のころに秩父で活躍した2人の日本画家の絵がここで鑑賞いただけるということで、地域の美術的な価値もここにはあります。

 

薬師如来というのは目です。

しかし本当は目だけではなく、あらゆる病なのです。

心も含めたあらゆる病を、「私を信じなさい。そうすれば癒してあげますよ」というのが薬師如来です。

ですから、薬師如来は薬壺を持っています。

右手は施無畏印(せむいいん)で「いらっしゃい」と言い、左手には薬壺ということで、お薬を持って多くの方々の体の病、心の病、または傷、いろいろものを癒してくれます。

 

その中で、ではどうして眼になったのかというと、お母様が眼の病に苦しんていた聖武天皇が、それを治してくださいと薬師寺を建立することで祈ったのです。

そこから日本では薬師如来・イコール・目というような形になって日本全国に広がっています。

 

お地蔵様、観音様、薬師様、いろいろな宗派を超えてお祀りされている仏様ですけれども、そのうちの一つ、薬師如来を慈眼寺でもお祀りしています。

「慈眼寺は『慈悲の眼の寺』と書くから目のお寺なんですね」というふうにもよく言われますが、薬師如来もお祀りしているから目のお寺なのです。

 

そして7月8日、夏の始まりのころには「あめ薬師」という縁日を行っています。

あめ薬師の縁日がなぜ7月に行われるようになったのかというと、先ほどお話ししましたが、この建物ができあがったのが7月20日です。

大正になりまして、「このお寺をこれからどうしようかね」というようなことを地域のお檀家さんと集まって考えたそうです。

 

その時の住職は柴原弘道になっていたのですけれども、山門前の道を檀家さんと歩きながら「どうしようかね」と考えていた時に、縁日をやろうというふうになっていたそうです。

そこで、多くの方に祈願を募って、皆さんに講としてまとめていただいて、露天商に出ていただいたわけです。

その当時、甘いもというのは大変貴重でした。

その貴重だった甘いものを露店で販売するということが始まりで、あめ薬師になっていったようです。

 

ちょうどそのころは、今とは違って梅雨なのです。

梅雨というと雨が降りますから、それで「雨薬師」とも言われています。

ですから、普通は縁日やイベントというのは、雨が降るとみんな嫌がるのですけれども、あめ薬師の場合は「ああ、雨が降ったね」、それでおしまいなのです。

これは主催者側とすると非常にありがたいことです。

 

そういう意味で、なめるアメと降る雨にかけて「あめ薬師」という名前で縁日も行われております。

毎月8日、平時ですと午前10時からここでご祈願をしてお話をしておりますので、ぜひお参りください。

 

観音様にも、お地蔵さんにも、阿弥陀さんにも、みんなそれぞれ御真言がありますが、もちろん薬師様にも御真言があります。

薬師様の御真言は「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」といいます。

お参りするときは「目を治してください」とか「目が治りますように」とかではなく、「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」と唱えてください。

もしくは「南無薬師如来」、それで十分です。

あとは、薬師様がみなさんお救いくださいますので、薬師様にお任せをしましょう。

 

こちらからの願いというのをあまり描かないことが大切です。

強すぎるエゴの祈りは、かえってマイナスの影響も及ぼしますので、空っぽにして「南無薬師如来」「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」、そういう御真言をお唱えすることで、皆さまの心と体が癒やされます。

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