優勝なんか目指さない
新庄が日本ハムの監督に就任しました。
昔は私も野球が好きでしたけれども、最近はあまり興味がなくて、ニュースで見ている程度でした。
ところが、今回の日本ハムの人事や戦略はすごいのです。
「ここで新庄を持ってきたか!」という感じで、経営陣の鋭さに敬服いたしました。
そして、もっと驚いたのが新庄です。
新庄の記者会見を見たのですけれども、思いつきで話しているようで、実はそうではありません。
阪神や日本ハムにいたとか、メジャーリーグに行ったとか、いろいろと最近話題になってますけれども、そのド派手なパフォーマンスや着ているもの、型にはまらない言動が計算だったということを知りました。
どうすれば世の中から注目をされて、人が集まって、そしていろいろなものが動いていくかということを、かなり戦略的にやっているわけです。
先日、槇原があるテレビで言っていました。
今回、新庄が監督になるということで必ず敬遠球を打たれたピッチャーとして槙原の映像が出てくるのですけれども、実は新庄は何日も前から敬遠球を打つ練習をしていたと、槙原に語ったそうです。
つまり、あれは何気なく打ったのではなくて、そういう場面のためにきちんと準備をしていたらしいのです。
実は、去年のトライアウトを受けた時に、日本ハムから「いつかまたご縁がありましたら」というメールが来たそうです。
「これは選手契約があるかもしれない!」と思って待っていたのですが、3日経っても連絡が来ませんでした。
その時に「ああ、これはもしかしたら1年後にあるかもしれない」と気がついたそうです。
それで1年間、いろいろなチームの視察をしたと言っていました。
そして実際に、1年後に監督としての記者会見の場に立っているというわけで、これは本当にすごいなことです。
そしれ私が一番驚いたのは「優勝なんか目指さない」という言葉です。
おそらく、野球の監督だけではなく、あらゆるスポーツの監督でそういうことを初日に言った人は初めてだと思います。
しかし「これは時代に合っているな」と私は感じたわけです。
みんな「目標に向かってどんどんやるということが大事だ」という教育を受けてきたわけですが、それで目標を達成できないとガクンと落ち込んで、「私はダメなんだ」みたいになってしまいます。
ところが、目標を明確に定めないでも、「しっかりと毎日やるんだ。コツコツ毎日やって1つ1つ勝つんだ」と続けていれば、優勝できるのです。
つまり、「目標に向かっていく」ということを目的にしないことが大事なのです。
その日に勝つことをしっかりとやっていくことが前提であって、結果として達成されるかもしれない時は頑張ろうというわけです。
これは今のこれからの組織を運営する、チームをまとめるためにもすごく大事なメッセージだなと感じました。
さらに「今年ドラフトで入ってきた人も、ベテランの人も全部含めて同じ列だよ」と言いました。
ベテランだからといって、過去のことで評価しないで、現時点で評価するというわけです。
最近、組織論としてティールというものがあります。
これは社長や上司がマネジメントをしなくても、目的のために進化を続ける組織のことなのですが、これはまさにティールだなと思って、新庄の話を聞いていました。
そういう意味でも、新庄のメッセージや動きが、これからのプロ野球だけではなく、日本全体に大きな影響を与えるはずです。
その時、日本ハムの経営陣2人は硬い表情で新庄の両脇に座っていたのですが、何か釈迦三尊像のようにも見えました。
しかし、その両脇がいることが大事なのです。
新庄は、実は結構相談しているはずです。
「どこまでやっていいのか」みたいなことを、きちんとオーナーや社長と確認を取りながらやるという辺りも、経営や組織として日本ハムは面白くなりそうな予感がします。
北海道では、きっと人が大きく動くのではないでしょうか。