住職が語る映画、そして音楽
今回は、私の趣味についてお話します。
私は音楽が大好きです。
音楽も幅広くいろいろとあるのですけれども、うちは母親が音楽好きだったということもあって、いわゆる日本の伝統的な音楽を聴いていませんでした。
どちらかというとポップな音楽が常に流れていました。
私の姉は11歳違いですから、ビートルズ全盛期にはビートルズがガンガンかかっていました。
皆さん、ジャニーズというグループは知っていますか?
ジャニーズというのはジャニーズ事務所の専属で、4人組のグループですが、その中の1人があおい輝彦なのです。
そういう環境で子どものころをすごしましたから、たくさんの音楽を聴きました。
当時聴いていた中で、私が大好きで仕方なかったのが坂本九です。
私が3歳の時、アルバムに坂本九のブロマイドを最初に貼ってくれと聞かなかったそうです。
ところが、うちにはまたクラシックのレコードもたくさんありました。
小学校4年生の時、父親がテレビで『オーケストラの少女』という映画を観せてくれました。
それはディアナ・ダービンがオーケストラで活躍する映画なのですけれども、その最後に流れるのが、リストの『ハンガリアン・ラプソディ』なのです。
これを聴いて「うわ、かっこいい!」と思って、それからクラシックを聴くようになりました。
小学校4年生の時は毎日学校から帰ってくるとレコードを聴いていたのですけれども、ヨハン・シュトラウス2世とか、そういうのばかり聴いていました。
小学校5年生からは、ほぼ毎週映画館に行っていました。
家の前に檀家さんがおりまして、その方が壁にある映画館のポスターを貼らせてあげていたのです。
そのポスターを貼っていただいたお礼にと、その方が映画館の無料券をもらっていたのですが、それを私にくれていたわけです。
そこは洋画を上映する映画館だったので、『卒業』や『ロミオとジュリエット』などを観ていたのですが、たまに次回の予告が流れます。
これが「小学生は見ちゃダメよ」というもの、例えば『私は好奇心の強い女』とか、結構危なっかしいものも流れてワーッと大興奮するのです。
その中で覚えているのがヤコペッティの『世界残酷物語』ですが、これは予告編しか観ておりません。
そういうこともあって、小学校5年生、6年生ぐらいからは映画音楽のレコードばかり聴くようになりました。
中学では部活はバレーボールだったのですけれども、ギター研究部もあって、そこでチューリップに出会ってギターをやりたくなったわけです。
ビートルズからチューリップという流れは分かりやすいですね。
そして、高校1年になったら山下達郎にドカーンと出会って、そこからソウルやジャズへと流れていきます。
『What’s Going on』を聴いた時の衝撃、「一度聴いただけで忘れられない」という経験はありませんか?
私には3曲あります。
そのうちの1つが、小学校のころにテレビで流れていたウールマークのCMソングです。
もう1つは映画『ベニスに死す』の、オッフェンバック教授の髪の毛の油が流れてくるバックに流れていた曲です。
その時にはこれが何という曲か分からなかったのですが、ある時に分かるのです。
あのウールマークの曲は、ディオンヌ・ワーウィックが歌っていた『What The World Needs Now Is Love』、これがバート・バカラックです。
そこからバート・バカラックにどんどんハマっていくわけです。
そして、ルキノ・ヴィスコンティの『ベニスに死す』で流れていたのは、マーラーの『5番』だったのです。
近くのお米屋さんで「いいスピーカーでいい曲が聴けるから、ちょっと来て」と誘われて、その曲が流れてきた瞬間に、私は「うわ!これだろ!」となったのです。
小学校、中学校のころから、こういう感じの毎日を生きています。
最近は、法事はあるのですけれども、食事をすることはなくなりましたので、1人でお昼から後席をやっております。
その時に観る映画や聴く音楽、これだけが楽しみなのです。
最近観たものですごいなと思ったのは、去年のアカデミー作品賞を取った『ノマドランド』です。
それから先日は、イギリスのテレビ局が作ったアガサ・クリスティーの名作『そして誰もいなくなった』を観たりもしました。
音楽のお勧めは『喝采』のちあきなおみです。
皆さん、この人をあまり軽く見ない方がいいですよ。
ちあきなおみの『夜へ急ぐ人』『朝日のあたる家』はすごいです。
あの人が人前に出なくなったのは、ある意味正解かもしれません。
あんなふうにずっと歌い続けることはできない、そう思えるほど、本当にすごいのです。
お酒を飲みながら聴いて、いつも号泣しています。