13権者(その2)
医王上人は薬師如来です。
昔の人は、医学が今のように発達しているわけではありませんから、自分の体を治すのはなかなか難しかったわけです。
それで「どうすればいいんだ」となって、神や仏に祈る、またはいろいろな呪術師に祈ってもらうことがありました。
その祈りの対象として薬師様がいらっしゃったのです。
ですから、医王上人を見ていただくと薬壺を持っているわけです。
そしてここからが面白いところで、13権者の中に閻魔大王がいるのです。
閻魔様といえば地獄の裁判官です。
生前に行ったさまざまな行いを、亡くなった後に「おまえはこんなことをしたんだろう。地獄へ行け」「極楽へ行け」と言い渡すわけです。
そして、この後に徳道上人という方が出てきますけれども、その徳道上人が病に伏せたとき、1度死後の線を渡って閻魔大王と出会います。
そして閻魔大王が「徳道上人よ。この世の中は今非常に人心が乱れている。そこで観音信仰を広めておくれ。そのために、あなたに33の御朱印を授ける。この御朱印を広めてほしい」と、託されて、徳道上人が西国の札所を始めたと言われているのです。
次が倶生神ですが、この方は閻魔大王の隣にいて裁判の記録をする人です。
ですから、筆と巻物を持っています。
続いて13権者の中にいらっしゃるのが、先ほども出てきました徳道上人です。
西国の札所を始めた方が徳道上人なのです。
奈良に長谷寺というお寺がありして、「長谷の観音」はものすごく大きな観音様ですけれども、その長谷寺を開いた方が、この徳道上人です。
徳道上人は閻魔大王から御朱印を託されて、戻ってきました。
そして「この33の観音様を何とか世の中に広めたい」ということで、今の西国の札所に御朱印を預けるのですけれども、あまりうまく観音霊場が広まりませんでした。
そこで、この御朱印を埋めてしまったという逸話が残っております。
もう一つ大切な方が性空上人です。
性空上人は播磨の国、つまり今の姫路に書写山圓教寺というお寺がありますが、その圓教寺を開いた方です。
この書写山圓教寺といえば、『ラストサムライ』というトム・クルーズと渡辺謙が出た映画がありますが、そのロケ地でございました。
私も行きましたけれども、興奮してしまいました。
そこにお参りしたことに興奮したのか、ここにトム・クルーズが来たから興奮したのか、そこは定かではありません。