お坊さんと髪の毛
特に小さい子どもたちからよく聞かれるのが、「なんでお坊さんは坊主なの?髪の毛が短いの?」ということです。
そして「お坊さん、髪の毛ないの?」とも聞かれます。
いえ、髪の毛はあるのですが、剃っているのです。
これはなぜなのか、みなさん知りたいようです。
なぜ髪の毛を短くするのかというと、仏教を開いたお釈迦様が「人間のこの世は苦しみばかりだ。この苦しみということを取り除くにはどうすればいいんだろう。これはみんな欲望によっているからだ。じゃあこの欲望を除けばいいんだ」ということで、その欲望の1つとして髪の毛を考えたからです。
「私はそういう欲を取り除くような生き方をします」という証しとして、髪の毛を剃るわけです。
髪の毛を剃ることには、あまり精神的な抵抗感はありませんでした。
ところが、やはり大学を卒業して本山に行くにあたって髪の毛を剃る時は、少し感慨深いものがございました。
「ああ、これでもう髪の毛を長くすることはないだな」と感じたのですが、さすがに涙がハラハラ……とはなりませんでした(笑)。
「本山に行く前に髪の毛を剃るのだな」という覚悟も必要だったのですけれども、今までの人生に1つの区切りを打つという意味合いもあったのです。
では、本山で生活をして秩父へ帰ってきてから、髪の毛を伸ばしたことがあるのかというと、ありません。
髪の毛を伸ばすということは、もう私は考えられません。
なぜなら、これは煩悩を絶ったから……というのはうそです(笑)。
これに慣れてしまって、髪の毛が大体1センチぐらいになると、長くて長くて、何とかしたくなるからです。
そういうわけで、なぜ髪の毛を丸くするのか、短くするのかというのは、人間が抱いている苦しみを取り除くためのまず第一歩として、お坊さんとしては頭の毛を剃りましょう、丸めましょうというところからきている、というお話でした。