秩父札所十三番住職 南泉和尚

南泉和尚のブログ

眠れぬ夜の御真言

2021年10月16日

今回は睡眠のことについてお話をします。

私は子どものころから鼻が悪くて、鼻が詰まるから鼻呼吸が苦手でした。
ですから、呼吸というのは口でするものだと思っていたのです。

ところが、呼吸というのは鼻でするものだと聞いたのは30代だったのですけれども、衝撃的でした。

 

口で呼吸していたので、すぐに喉が渇いたり、扁桃腺が腫れて熱が出るわけです。

私は、扁桃腺というのは自分の特質だと思っていたのですが、違いました。

鼻呼吸ではなかったからなのです。

 

寝ているとすぐに息が止まって「ハッ」となることがあったのですが、当時はまだ「睡眠時無呼吸症候群」という言葉がありませんでした。

40代になったころからどうしても夜眠れずに、体が疲れてどうしようもなくなって、「何とかならないかな」と思っていろいろと調べたのです。

そのころは今みたいな検索システムはなかったのですけれども、ようやく睡眠専門のクリニックを見つけることができました。

 

それで調べたら、見事に睡眠時無呼吸症候群でした。

それまでは、夜寝たら朝起きるまで大体45分おきぐらいに起きていたのです。

つまり寝ていないわけです。

ですから、朝起きた瞬間に「ああ、疲れた…」となるのです。

検査が終わった後にお医者さんに「これは毎日マラソンを走っているのと同じぐらい心臓に負荷がかかっています」と言われました。

 

検診で睡眠時無呼吸症候群だということが分かると、CPAPという機械をつけることができます。

CPAPをつけて初めて寝た日の朝のことが忘れられないのですが、寝たら朝だったのです。

それまで約45分おきに起きていたのですから、「すごい!睡眠ってこんなに快適なんだ」と感じました。

睡眠時無呼吸症候群とは今でも付き合っていますけれども、そのCPAPという機械のおかげで快適な睡眠がすごせています。

 

ところが、年を重ねると、やはり週に3日くらいは目が覚めてしまいます。

目が覚めてしまうと、「まだ時間があるからもう一度寝よう」と思うのですが、そういう時に何だかんだと頭の中でグルグル考えが動き始めてしまうのです。

不思議なのですが、寝たいのに、頭の中をグルグルいろいろな考えが浮かんでしまいます。

おそらく、このブログを読んでいるあなたもそういうことがあると思います。

 

「寝る時からずっと頭の中にいろいろなものが浮かんでしまって、なかなか眠れません」という人には、御真言を唱えることをお勧めします。

「御真言、さて何でしょう?」と感じるかもしれませんが、仏様にはそれぞれ御真言があります。

これは分かりやすく言うと、呪文のようなものです。

 

初めて聞いた方もいるかもしれませんが、観音様は「おん あろりきや そわか」、薬師如来は「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」、これが御真言です。

そして般若心経の「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはらそーぎゃーてーぼーじーそわか」というのも御真言の一種だと言えます。

これはインドの古い言葉で、お釈迦様がまだ存命だったころ、お釈迦様の生まれ育った地域で使われていた言葉だと言われています。

それを漢字に訳すことなく、音だけが中国から朝鮮半島、そして日本に伝わったのです。

 

「おん あろりきや そわか」「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」「おん しらばった にりうん そわか」「おん かかか びさんまえい そわか」など、いろいろあるのですが、これをぜひ1つ覚えてください。

私も夜「何だか今日はよく眠れないな。頭が冴えちゃってるな」というときには、目をつむってゆっくり呼吸をして、お腹の下の方に息が行くように意識しながら、「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」と頭の中で言っていると、大体3回ぐらいで意識不明になります。

 

ある時、旦那さんががんになってしまい、「とにかく心配で仕方がない」と言っている女性がいました。

旦那さんはがんという病気ですから、「薬師様の御真言『おん ころころ せんだり まとうぎ そわか』と唱えてごらんなさい」と言って、その場で7回唱えてもらったのです。

7回唱えてもらって「待ってください。今あなたは7回唱えていたでしょう。7回唱えている間、頭に心配事が浮かびましたか?」と聞いたら、「浮かんでない」ということでした。

 

ですから、「心配になったら『おん ころころ せんだり まとうぎ そわか』と唱えてごらん。心配事なんて頭の中からなくなるから」と言ったわけです。

そうしたら、その人はすっかり立ち直りました。
心配をするということを手放すことができたのです。

すっかり心もまいっていたのだけれども、立ち直ることができたわけです。

御真言にはそういう力があるのです。

 

人間というのは探究心があって好奇心がいっぱいですから、「御真言にはどういう意味があるのかな」と調べたくなってしまいます。

しかし、調べても「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」は特に出てきません。
分からないのですが、それでいいのです。

私はお坊さんなので、少しだけ知っているので解説しておきます

最初の「おん」が大事なのですが、これは「オーム」、つまり聖なる音です。
ですから、意味の付けようがありません。

しかし「そわか」には、「成就します」「成就しました」というような意味があるのです。

 

2600年前のお釈迦さまのころからずっと伝わっていて、いまだに多くの人たちを救ってくれている、「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」や「おん あろりきや そわか」という御真言を、睡眠に悩む皆さんにも使っていただけるよう、今回お勧めしています。

 

「おん あろりきや そわか」、これは観音様のご真言です。

「おん ころころ せんだり まとうぎ そわか」、これは薬師様です。

どちらも短い言葉ですから、ぜひこれを頭の中に覚えて、眠れなかったら、唱えなくても頭に思い浮かべるだけで、あなたは睡眠の世界に入ってしまいます。

これが不思議なのですが、ありがたいことです。