お焼香の仕方

時々、お寺に来てご本尊様の前で柏手を打つ人がいますが、これは神社様のお作法でございます。

お寺では基本的には手を合わせる、合掌だけです。

では、お寺では手をたたいてはいけないのかというと、そうでもないのですが、例外を言うと皆さんが混乱しますから、神社様では柏手を打って、お寺では合掌をしてください。

そういう基本的なことを、もし「そうだったのか!知らなかった」という方がいたら、覚えておいていただけるとよろしいかなと思います。

 

たまに「お焼香はどうすればいいでしょう?何回やればいいんでしょうか?」という質問があるので、今回は焼香の作法についてお話をします。

 

「お焼香してください」というご案内がありましたら、基本的には左側から進みます。

座っている状況や、会場の様子によって変わってきますが、基本的には左側から前に進んでいきます。

そして、お祀りしている仏様、またはお位牌かもしれませんが、最初は正面ではなく、半歩左にずれた所で合掌して頭を下げてください。

 

そうしましたら、真ん中に立って、まず右手でお香をつまみます。

この時、小指と薬指は使いません。

今ではそういうことを言わないかもしれませんけれども、小指と薬指というのは「不浄指」と言って、使わないということを覚えておいてください。

 

左手は合掌の手を開いたままで、一度、目の高さよりも少し下ぐらいのところまで手を添えていただいて、そして炭の上につまんだお香を乗せてください。

1回目はゆっくりと「拈(ねん)ずる」のですけれども、2度目はそのまま乗せます。

そうしたら、また半歩右にずれて、そこで合掌して頭を下げてください。

 

その後の回り方が、実は總持寺さんと永平寺さんでは違います。

私は總持寺で修行をしましたから左に回るのですが、これには理由があるのです。

永平寺山さんと總持寺さんでは、お祀りしている正面の型が少し違うので、そこにお尻を向けないようにということで、そうなっています。

その辺りのことはあまり気にしなくても結構です。

 

これは曹洞宗のやり方です。

臨済宗さんや黄檗宗さん、または浄土宗、真言宗、日蓮宗、天台宗、それぞれのやり方があるはずですが、私は曹洞宗、しかも總持寺で修行をしたので、ほかのやり方がわかりません。

しかし、それでいいのです。

3回というところもあれば、1回というところもあります。

もし一般の方がお寺さんの法要、または法事、通夜、葬儀に参列した場合は、1回で結構です。

3本の指でゆっくりと念じて、左手は合掌のまま添えていただいて、ゆっくりお参りしてください。

 

これはお坊さんの世界ですけれども、前に進む時には合掌はしません。

これを「叉手(しゃしゅ)」言います。

絡子(らくす)を着けている時は、叉手(しゃしゅ)は絡子(らくす)の中でして見せないのです。

ですから、たまにお坊さんではなくても、絡子(らくす)を着けている方がいたら、中で叉手(しゃしゅ)をしています。

このまま前へ進んで、先ほどのようにお参りをしていただいて、帰る時は合掌します。

これを「神前叉手帰依合掌」と言う、そういう基本的な決まりがございます。

 

ですから、通夜、葬儀等に参列する場合は、ずっと合掌でもいいのですけれども、お参りする前までは手はあまりブラブラさせません。

手はそのままでいいのですけれども、大体胸の前辺りに持っていただいても結構です。

そして帰ってくる時は合掌、これが基本的なお焼香の流れでございます。

お焼香1つとっても、結構細かい決まりがあるのです。

面白いでしょう?

 

しかし、前にも何回かお話しましたけれども、基本を知ったうえでイレギュラーがあっても問題ありません。

人は違っていてもいいのです。

自分はそれを知っていて、ひけらかすこともなく、ただその通りにお参りをできればいいのです。

 

よく、通夜、葬儀等でご遺族の代表が前に立っていることがありますが、もしご挨拶するときは、自分のお焼香の前にご挨拶をしていただけば、スムーズにお焼香して、亡くなった方に対してご挨拶ができます。

その辺りを頭に入れておいていただくと、いろいろなお寺さんに行ったり、または法要に参列をしていただいたときに、心を清らかにお焼香ができるはずです。

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