御開帳の思い出
御開帳というのは、普段閉じている御本尊、よく「秘仏」と言いますけれども、この秘仏の扉、あるいは御簾を開けることです。
山形県最上地方に最上三十三ヶ所という歴史のある札所があります。
私が若かった30~40代ごろだと思いますけれども、「最上の札所が総開帳だから行こうよ」と、檀家さんや信者さん15~16人と共に、4泊5日の日程で行ったことがあります。
まだ令和8年の御開帳の詳しい日程は決まっていませんけれども、秩父の場合、例えば3月1日~11月18日と決まれば、3月1日に全部のお寺が扉や御簾を開け、11月18日に全部のお寺がそれを閉じます。
総開帳というのはそういうものだと私たちは思っていました。
ところが、最上に行ったら驚きました。
あるお寺に着いたところ、何やら法要をするらしく、檀家さんや信者さんも集まって、普段とは少し違う雰囲気になっていました。
私たちが札所でお勤めをしておりましたら、お寺のお勤めも始まりました。
私は「邪魔しちゃ悪いな」と思って見ていたのですが、太鼓が鳴り始め、ご住職が真ん中に座って御真言を唱えるわけです。
すると御簾がバーッと上がって観音様がお出ましになり、しばらくするとその御簾が閉まっていきました。
これで御開帳はおしまいです。
何も知らない私たちは偶然そこにいたわけです。
その時は「何という偶然、ラッキー!」と思っていましたが、今は「そうではない。観音様が私たちにそういう機会を与えてくれたんだ」と、感動とともに思い返しています。
なぜ坂東も秩父と同じように総開帳ができないのかというと、それぞれのお寺さんによって観音様の姿形が違うからというのもあるのですけれども、お寺によってそのやり方が違うからなのです。
例えば、日光の中禅寺などはそもそも大きすぎて閉じようがありませんから、総開帳などできないのです。
昔、姫路に行った際、地元の人に圓教寺に連れて行ってもらいました。
圓教寺といえば『ラスト・サムライ』でトム・クルーズが渡辺謙とロケをした場所としても有名です。
そこでお参りさせてもらったのですが、案内に従っていくと普段は公開されていない毘沙門天様が公開されておりました。
これもやはり特別な日だったのです。
そういうことを知らずに行ったのですが、やはりいろいろなご縁があるわけです。
その時のことが頭の中にあって、令和8年の御開帳の際には、皆様にも奥にいらっしゃる観音様の間近で手を合わせていただけるようにしたいと考えておりますので、ぜひお参りください。