秩父札所十三番住職 南泉和尚

南泉和尚のブログ

言葉は大切にしましょう

2022年6月20日

今回はお釈迦様の教えについてお話しします。

お釈迦様は、私たちにたくさんのことを教えとして残してくださいました。

その中で、私が時々思い出しては「ああ、そうだよね。その通りだよね」と思うことに「言葉」があります。

 

お釈迦様は言葉をものすごく大切にしていました。

「一度口から出した言葉は取り戻せない。だから言葉を発するということを慎重にしなさい」と言っています。

 

インドでずっと大切にしていた教えに「真実の言葉」というものがあります。

これを大切にしていた政治家がインドにいました。

皆さんもご存知のマハトマ・ガンジーです。

マハトマ・ガンジーが言っていた「真実の言葉」、それはサティヤグラハと言います。

「一度口に出した言葉は、実践すれば必ずもっと重いものになる」、要するに「一度言った言葉は実践しなければない。そうすると、どんな小さなことでもものすごく大きな力になるんだ」という教えなのです。

 

私は、朝「おはようございます」と鏡に向かって挨拶をしていますけれども、それをずっと続けていると、その言葉は真実の言葉になるのです。

マハトマ・ガンジーは「非暴力運動」を提唱しました。

そして彼は、一切武器を持たずにイギリスからインドの独立を勝ち取ったのですが、その根底にあったのが、このサティヤグラハなのです。

 

お釈迦様はそれをすごく意識をしていて、実践できるかどうか分からない約束はしなかったと言われています。

お釈迦様は「何月何日にここに来てください」と言われても、「はい、分かりました」とは言わなかったそうです。

その日の朝になって、自分が行くことができたら、初めて「分かりました、行きます」と言ったのだそうです。

それほど言葉を大切にしていました。

 

一度口に出したものはもう取り戻せない。口に出したものにはものすごく重みがあるから大切にしなくてはいけない、そういうことを言っていたのです。

真実の言葉、サティヤグラハ、これは大事だなと感じています。

 

どうしても私たちは、「〇〇に〇〇するぞ」と目標を立てて、それがその通りにならないから落ち込んだりします。

しかし、お釈迦様はそういうことをせずに粛々と毎日を過ごしてきたわけです。

 

もう1つ、苦しみを取り除く8つの具体的な教えという、八正道(はっしょうどう)というものがあるのです。

その中の1つに正語(せいご)というものがあります。

しかし、何が正しい言葉で、何が正しくない言葉なのか分かりません。

 

お釈迦様は、「嘘をつかない」「悪口を言わない」「二枚舌を使わない」と言っています

つまり、正しい言葉というのは、具体的に「こういう言葉を使うのが正しいんだよ」というレベルの話ではないのです。

 

そこに先ほどの真実の言葉、サティヤグラハを重ね合わせていきますと、お釈迦様が大切にしていたことが浮かび上がってくるのかなと感じています。

「一度口から出したものは取り戻すことができないんだぞ」ということを、私は時々思い出して「軽率なことを言ってしまったな」と省みることがあるわけです。

 

そしてもう1つ、お釈迦様の言葉の中で「なるほど、その通りだな」と思う例え話があります。

それは、人から悪口を言われた時の話なのです。

私たちは人から悪口言われたり、何かを言われたりすることを気にするではありませんか。

脳というのは不思議なもので、そのようなことを言われると気になって仕方がありません。

「私はあの人から悪口を言われている。私はダメなんだ」と思い込んでしまうことがあります。

 

そういう時にお釈迦様は「いいかい、あなたが友達に招かれたとしよう。そこでたくさんのごちそうがあった。そのごちそうをあなたは食べずに立ち去った。そうするとそのごちそうはそのまま残されている。悪口とはそのようなものだ。だから、食べなきゃいいんだ」ということを言っていました

「なるほどな。そんなことに左右されなくていいんだ。悪口を受け止めなきゃいいんだ。悪口を食べなきゃいいんだ」と言っているわけです。

 

私も人からいろいろなことを言われますが、そういったことは一切気にしないようになってきました。

確かに心は左右されるのですけれども、「ごめんなさい、今はその悪口を私はいただきません」というふうにしていきたいなと思っているところです。

 

お釈迦様の言葉や教えが、自分の中にたった1つでもいいから入っていると、いざという時に「そうか、お釈迦様はこう言っていたな」と思い出して、考えや言葉、行動がまとまる機会がたくさんあるのです。

ですから、お釈迦様の教えや言葉を、ただ単に「ああ、良い話を聞いたな」ではなく、自分の生活の中に活かしていっていただきたいと感じています。

 

「誰々から悪口を言われて落ち込んでいます」などと言うお坊さんは、お釈迦様の教えを知らないのです。

お坊さんはお釈迦様の教えを実践していく存在なのです。

 

お釈迦様は言葉をとても大切にしていました。

「言葉は心をズタズタにするナイフのようなものだ」ということも言っています。

ですから、人を励ますこともできるし、ひとを傷つけることもできます。

そういった言葉を大切にしていきましょう。

 

一度口出した言葉というのは重いもので、口に出した言葉を実践すると、それは真実の教えになるのです。

そして、人から何か悪口を言われても、それを食べなければいいのです。