たった一人の非常識な行動が、世界を変えることがある

ある朝男は、家を出た。

愛する妻とこどもを残したまま。

男は、自分のやりたいことをやるために、家を捨てたのである。

 

とても非常識だ。

 

しかもその男は、長としてその地域を治める予定だった。父親は、その地域の長としてたいへん尊敬を受けていた。その部族は、小さいながらも、幸せに暮らしていた。どの家庭もこの地域で暮らせることを誇りに思っていた。父親も、その男に、継がせるため、あらゆる努力をした。

 

父親は、結婚後なかなか子宝に恵まれなかった。後継ぎはまだか、まだかと待ち焦がれていた中、ようやく授かった男の子だった。

妻は、実家で出産をしようと里帰りをした。その途中、突然産気づき、実家に着く前に、出産した。男の子は、無事に産まれた。

 

その朗報は、直ちに父親に届けられ、地域の者も皆大いに喜んだ。

 

ところが、出産して7日後、妻は帰らぬ人となった。喜びと悲しみが、一気に襲いかかった。地域の者も皆、悲しみの涙を流した。それでも、父親は、長として悲しみを乗り越え、地域の発展に力を尽くしたのである。

 

男の子は、すくすくと成長し、文武両道に励んだ。結婚し、男の子も産まれた。この地域は、これで安泰だと誰もが思っていた。

 

そんな矢先のある朝、男は、一人家を出た。地域を治めることも放り出し、妻子を残したままである。

 

この男をあなたは、どう思うだろう?ある意味、とてもわがままで非常識だと感じたに違いない。

 

この男の名は、ゴータマ・シッダールタ。後のブッダである。

 

ある側面から観ると、ブッダは、非常識な人である。常識を超えた存在なのだ。

 

しかし、この非常識な行動が、多くの人を救い、人類の宝を生んだのだ。

全てを捨てて、家を出るというはじめの一歩を踏み出した勇気、大勇猛心があったればこそ、今こうして、私たちは、心の平安を得ることができるのだ。

 

たった一人の非常識な行動が、世界を変えることがあるのだ。

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